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現代制御理論によるフィードバック制御
ここでは現代制御理論によるフィードバック制御の簡単な説明をします.

PID制御などに代表される古典制御理論では,制御対象システムからの内部状態を制御装置へ渡すことができません.
もし,この内部変数を制御装置へ渡すことができれば,もっと精度よく制御できるはずである としたのが現代制御理論の考え方の一つです.

                 入力決定アルゴリズム
                      +----------+        +----------+
             +   e(t) |          |  u(t)  | 制御対象 |   y(t)
目標値 yd -----O----->| 制御装置 |------->| システム |---+----> 出力
               A -    |          |        |(多入出力)|   |
               |      +----------+        +----------+   |
               |           A                    |        |
               |           | システム内部の変数 |        |
               |           +--------------------+        |
               |                                         |
               +-----------------------------------------+
フィードバック制御における入力 u とフィードバック出力 Fx の関係は u = fx で表すことができますが,状態 x のすべてがわかるわけではありません.
つまり,出力は y = Cx で表現されますが,このときわかるのは状態の一部でしかありません.
よって,”入力と出力の情報から,状態 x を推定すれば良いのではないか”ということになります.
これを可能にするのがオブザーバー(観測器)です.
なお,オブザーバーが設計できるのは,システムが可観測な場合だけになります.

ここで,状態に関する方程式を考えます.

{ .
{ x = Ax + Bu (状態方程式)
{ 
{ y = Cx      (出力方程式または観測方程式)
{

x は状態ベクトル,u は入力ベクトル,y は出力ベクトルである.
ここで,x(t) を推定するシステム z(t) を考えます.
 .
 Z = Az + Bu
これを図示すると下図のようになります.

               x
          +----------+
  u --+-->| 制御対象 |-----> y
      |   +----------+
      |
      |        z
      |   +----------+       ^
      +-->|数学モデル|-----> y
          +----------+
また,指定値と計測値の偏差 e(t) を
e(t) = z(t) - x(t)
とすると,
.
e(t) = Ae(t)
となります.
よって,
         (at)    (0)
e(t) = e^    ・e^   
ここで,A が安定であるときには, e(t) -> 0 となります.
つまり,z(t) -> x(t) となることが考えられますので,これによって x(t) が推定することができます.
もし,A が安定でないとき,または,若干速くシステムの応答より推定したいときには,
.                                    ^
Z(t) = A・z(t) + B・u(t) + K( y(t) - y(t) }
というシステムを考えます.
これを図示すると下図のようになります.

               x
          +----------+
  u --+-->| 制御対象 |---------+---> y
      |   +----------+         |
      |                        |
      |                +---+   V
      |            +---| K |<--O
      |            |   +---+   A
      |        z   V           |
      |   +----------+         |    ^
      +-->|数学モデル|---------+--> y
          +----------+
これは
.
Z = A・z(t) + B・u(t) + K・C・{x(t) - xz(t)}
となり,
 
  = (A - Kc)・z(t)+ B・u(t) + K・C・x(t)
  = (A - Kc)・z(t)+ B・u(t) + K・y(t)
となります.
このときの偏差 e(t) は
e(t) = z(t) - x(t)
とすると,
.
e(t) = (A - K・C)e(t)
であり,よって
         (A-K・C)t      (0)
e(t) = e^           ・e^
となります.
ここで,(A-K・C) がある応答速度で安定化できれば,ある速度で推定可能となります.
よって,A と C が可制御であれば,(A - K・C) を安定化できる K が存在することになります.
これを(A,C) が可制御であるであると言います.

現代制御理論はシステムが可観測であるときに,オブザーバーを構築することができ,システムの入力と出力から状態 x を推定することが可能となります.
これを2次元で状態方程式,出力方程式を表すと以下のようになります.


  d  [x1]   [a11  a12][x1]   [b1]
 ----[  ] = [        ][  ] + [  ]・u
  dt [x2]   [a21  a22][x2]   [b2]

            [x1]
 y = [c1 c2][  ]
            [x2]


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